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2010年 11月 24日
先日博多へ行った時の帰りの新幹線での出来事。
停車駅である広島のホームで、大きなトラベルバッグを足元に置いた 40歳位の細身の女性と、それを見送る中学生位の女の子と小学生位の弟が その母親らしき女性を見送りにホームまで来ていた。 僕は私用の電話をかけるためにデッキ部分に来たが、僕がたたずむ反対側の扉が 開いた瞬間外気のひんやりとした空気と人々の雑踏と、 列車のノイズの隙間を縫って、その家族らしき会話が部分的に聞こえてきた。 『お母さん、次いつ会えるの?』 おそらく・・・家族間でそれまで口にしてはいけない・・・別れ時にはタブーな言葉を、 小学生の男の子が泣きながら、大声で叫んでいた。 耐えきれない哀しみと、行き場のない怒りを母親にぶつけ顔面を真っ赤にしながら叫んでいた 『ねえ、いつ会えるの??』 そして姉らしき女の子は、まるで何かの痛みに耐えるかのように 必死で泣くことを無言のまま我慢していた。 我慢と言うより、言葉では言い尽くせなかったのかもしれない・・ 僕には痛いほどその心中が表情から伝わってきた。 まるで1週間も降り続いた雨で決壊寸前のダムのような表情を 薄暗いホームの照明がさらにその痛みを浮き立たせる。 『また、会えるよ。』 母親は小さい声で・・・でも力強く、優しい声だった。 そして母親は小さな兄弟の身体を、自分のカラダに抱き寄せた。 ホームに落とす3つの影がひとつになり、ヒト恋しくなる前の互いの温もりを 確認しあっているかのようだった。 僕は携帯をポケットにしまい、伏目がちに彼らの様子を見ていた。 まともに彼らを直視することが出来なかった。 自分でも何故そうしたかわからないが、 彼らのヒトツになった影を見ているだけで充分だった。 発車のベルが鳴り、再び影は3つになり・・・ そして2つの小さな影はホームに残酷にもとり残された。 母親は音もなく車両に乗り込み、また小さな声で子供たちに声をかけた 『またね。元気でね。』 どんな理由が彼らをそうさせたのだろうか? 訳あって会えない理由や一緒に過ごせないどんな事情が、 この家族を離れ離れにさせるのだろうか? 列車のドアがゆっくりと閉まり、音も空気も違う世界に変化する。 手を伸ばせば届く距離なのに・・・すぐそばにいるはずなのに・・ もう既に遠くに来てしまった気がした もしこの列車が故障して動かなかったら・・・ 前の車両が人身事故でこの車両が動けなかったとしたら・・・ 僕は一瞬だけそんな奇跡を想像したが、無常にも新幹線は動き出した。 兄弟は母親の姿を追いかけてくる。 車両が加速しても必死になって、泣きながら追いかけてくる・・・ 窓際で母親は小さく手を振り、またねと 小さく声をかけていた。 そして長いはずのホームはあっという間に途切れ、 ドアの向こうの景色は何もかも暗闇に吸い込まれていった 彼らの姿も闇に消え、そのガラスには激しく嗚咽する母親の姿が映りこむ 僕は何か声をかけようと思ったが上手い言葉が見つからずに、 ポケットの中にある携帯を意味もなく、手の中で触っていた。 しばらくして僕の存在に気がついた、母親は スミマセンと僕に軽く頭を下げて、 何かモノ言いたげだった 『優しいお子さん達ですね』 僕の中で思いついた言葉はそれしかなった。 すると母親は、再び泣き崩れながらも 『そうなんですよ・・・』 と、小声で無理やり笑顔を作りながら答えてくれた。 僕はそれ以上話すつもりもなかったし、言葉も見つからなかった。 もっとも、向こうもそれを望んでいた気がした。 女性は再び僕に軽く会釈をして、指定席の車両に入っていった。 細身のその後姿は、毅然とした子供の前の時とは異なり哀しい空気が漂っていた。 対面する乗客が不思議そうな顔で彼女を見ていた。 そんなに見るなよ・・・ ヒトが涙する訳はいろいろとあるのだから・・・ 僕は携帯をポケットから取り出し、自宅にコールした。 電話に出たのはツキホだった。 ディスプレイで僕の電話番号を見て、家族が出させたのだろう。 『お父さん、いつ帰ってくるの?』 いつもの大きな声が、僕を現実に近づける。 重いドアの向こうは暗闇しかなく、どんなに目をこらしても何も見えない。 『今、ヒロシマだら、つきちゃんが眠っている頃に帰るよ』 トンネルで電波が切れそうになる 『つきちゃん、お土産あるから・・・待っていてね。すぐ帰るから。おやすみ。』 何とか言い切ると、電話はそこで途切れた。 きっと受話器の向こう側では、切れたと大騒ぎしているにちがいない。 用件は何とか伝えれた。 僕の心も比較的落ち着いてきていた。 短めのトンネルを抜けるとガラスの向こうに、うっすらと街の灯りが見えた。 あの兄弟は無事に家路につけただろうか? あの母親は涙を止める事ができただろうか? 誰しも様々な人生があり、様々な困難が待ち受けている。 惜別は、いつかヒトを強くしてくれるかもしれない・・・ そして絆を、愛情を深めてくれるのかもしれない・・・・ 僕は再び闇に入り込んだこの列車の窓に向かって祈りを捧げた。 あの家族が再び会えることを・・・ 僕の娘が楽しい夢を見て眠ることを・・・ この闇に明るく暖かな光が射すことを・・・ 誰もが愛しているヒト達に会えることを・・・
by ae86hidekidri
| 2010-11-24 00:14
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