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2011年 08月 29日
先週の週末はかなりタイトなスケジュールな一日だった。
あっちこっち走って、現場の確認と引渡し、打ち合わせなどなど 肉体的には全然疲れていないのに、かなり神経をすり減らす1日の運びとなった。 そんな移動の途中、ちょっとした出来事があった。 現場で近くの有料駐車場に自分のハイエースを停めておいたので そろそろ引き上げようと車を取りに行くと、その有料駐車場の壁際で女性がしゃがみこんでいた。 年齢的におそらく30代くらいだろうか。 髪の毛はロングだかお世辞にも手入れが行き届いているようには見えなかった。 初めは体調が悪く、しゃがんでいると思っていた。 熱中症か貧血かと。 心配になって近づいてみると、アスファルトは・・そのしゃがんだ部分が次第に濡れはじめ・・・ なんと・・・そこで排泄をしていた・・・。 僕は初めはびっくりしたが冷静にその方を観察すると、すぐに知的障害者の方だと分かった。 一見普通の女性だが、大きめの名札を下げていて、スリッパ履きのままだった。 僕の視線に気がついた女性はヘラヘラと笑い 『今ね、おしっこしてるの』 と、座ったまま僕に話しかけてきた。 『トイレでしたほうがいいよ。できれば。』 と普通に話しかけると、またヘラヘラと笑って僕を見ていた。 すぐ側には国道が走っていて、僕は周りを振り返ると信号待ちのドライバー達が興味深そうに僕らを眺めていた。 この現場の近くにその施設があるのは知っていた。 スリッパ履きからして、そこの入居者であることは間違いなさそうだった。 本来なら施設送り届けてあげようと思ったのだが、時間がなさすぎた。 だからといってこのまま帰ってしまうのは・・・あまりにも彼女がかわいそうに感じて、 僕はハイエースから波乗りで使っているバスタオルとティッシュとビニール袋を持ってきて、 彼女の肩からバスタオルをかぶせてあげた。 そしてティッシュとゴミ袋を手渡した。 『ちゃんと拭いて、拭いたティッシュはゴミ袋に入れて帰るんだよ』と。 『タオルはあげるから、好きなようにしていいよ。』 彼女の瞳は不思議そうな感じで僕を見上げたままながらも、ありがとう、としゃがんだまま 僕に軽くお礼を伝えてきた。 大きな綺麗な目からは少し混乱していた様子が伺えた。 このヒトは誰なんだろう?このバスタオルは何なのだろうと。 僕はタオルはいいよ。使って下さい、と言い残して駐車場の機械にお金を払い車を出した。 そして車内から彼女のほうをもう一度見ると、 下着をあげて、ある程度身なりを整えた姿は・・・4つんばになってバスタオルでアスファルトを拭いていた。 掃除をしているつもりなのだろうか。 正直、どうすればいいのか分からなかったが、これ以上僕には何もできなかった。 現場で荷物を積み込みをしたが、どうも気になってしまい行き先とは反対方向だがそちらに車をまわした。 既に彼女の姿はなく、そのアスファルトには濡れた跡しか残っていなかった。 その跡を眺めていたら、自分の中で何かとても複雑な心境で・・・ まるで細い糸が絡まってしまって、手の施しようのない状態になってしまったかのようだった。 自分が行ったことが彼女にとって負担になったかもしれない・・・迷惑だったかもしれない。 まさかアスファルを拭くとは・・・。 僕が手を差し伸べたことは何の意味があったのだろうか? でもヒトとして・・・あんな排泄している姿を、 排気ガスの熱気でむせそうな位渋滞しているドライバー達に見せたくはない。 それがいくら全く知らない他人でも。 女性という立場なら尚更・・・。 あの大きな瞳から読み取れた心理は、半分は正常で半分は違う自分がいて・・・ どこか僕に助けを求めている視線だった。 それでも・・・自分でもよくわからない心境が僕を益々混乱させ、 何が起きたのか判断のつきにくいグレーな・・・虚無な気持ちになった。 そして・・・・その現場からの帰り道、2件寄って事務所に20時頃戻った。 カバンを置き、テーブルの上に並んでいるFAXやメールをチェックすると、 その中に一枚見慣れないFAXが混じっていた。 件名には『お礼』と書いてあった。 発信者はその施設の管理者からだった。 どうやらその駐車場で起きた一部始終を50mほど離れた施設から見えていたらしい。 他の職員が歩いて迎えにいく間に僕の車が出てしまって、お礼を言いたかったらしいが間に合わず、 かろうじて僕のハイエースに張ってあるwww.yoshidainterior.jpが見えてWEBで探したようだった。 お礼を直接伝えたいので電話をしてもいいでしょうか?とのことだったので僕から電話をした。 とても感じのいい女性が応対してくれてバスタオルは新品で返したいなどなど言ってきたが 僕は丁重にお断りした。 僕は彼女に対して迷惑な行為ではなかったかとその職員に聞いてみた。 自分の気持ちをしっかりとしたかった為にも。 『あまりプライベートなことなので大きな声では言えませんが・・・実はあの女性は震災前までは普通の方でした』 『6人家族で車に乗っていて、あのヒトだけ助かって・・・。』 僕は言葉にならなかった・・・・。 また・・・震災か・・・・。 どこまで傷跡が残っているんだろう・・・ あの天災はどこまでヒトを落としこめば気が済むのだろうか。 一家全滅だなんて・・・今の時代起こりえる出来事なのだろうか? でも事実起きたことだから、あの女性がいて・・・・。 電話を切ったあと、僕はその震災で亡くなった親友の想いがフラッシュバックしてきて、 思わず嘔吐しそうになった。 あの言葉を持たぬ瞳が訴えていたのはこのことだったのだろうか? 今、彼女の心の中にはどんな明かりが灯されているのだろうか? 被災者はあの日から全てが変わり、喪失し、そして深すぎる爪痕が心にまで達していて・・・ その管理者との電話の会話は途中から何を話したのか覚えていない。 僕のゆっくりと治癒されていた、何かが再び口をあけだした。 ただ、以前と違うのは弱気に流されてしまう自分ではなく・・・・それは僕を何処かへ強く突き動かしていて・・。 しばらくしてから親友の奥さんに電話をした。 2コールで繋がり、彼女はとても元気な声で喜んで話してくれた。 お腹の赤ちゃんも順調だよ。 涼しくなったら遊びにきてね。 今はまだ何もないけどさ、来てくれるだけでいいから。 僕は弱い自分を曝け出すのを必死で押さえて、感情を殺してマシンガンのように 途切れない彼女の会話に相槌をうった。正直、それしかできなかった・・・。 ヒトとして手をさしのべること・・・ 僕らは今でも無力だけれど、ヒトとして迷いなく心をさしのべることが・・・ 崩れかけたヒトを救う唯一の力で方法なのかもしれない。 電話を切ったあと・・・僕は目を閉じて頭を整理した。 そして昼間の出来事を想い出していた。 人間とは・・・・一体何なのだろう・・・・ 生きて行く以上、苦行は乗り越えなくてはならないとわかっていても・・ あまりに、激しく、厳しく、切なすぎる・・・・。 あの大きな瞳の奥にしまいこまれた感情に再び暖かな明かりが灯すことに、僕は祈るばかりだった。 そして、今日の出来事がほんの僅かでも彼女の瞳の奥に届いてくれるようにと。 彼女の心に家族が戻ってくるようにと・・。
by ae86hidekidri
| 2011-08-29 16:38
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